不動産業と消費税の二重の増税

消費税の税率について、今年の4月に地方消費税の税率と合わせて8%となり、さらに来年10月には10%となることはご存じの方は多いかと思います。

この増税とは別に、不動産業を行われている方で簡易課税制度を選択されている方は消費税が増税されます。

具体的には、簡易課税制度のみなし税率が50%から40%へと引き下げられます。

簡易課税制度とは、課税売上高の一定割合を課税仕入高とみなして仕入控除税額の金額を計算する制度のことです。この制度は、前々年又は前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択可能です。原則課税と比べて経理の手間が少なくて済むこと、税額が原則課税の場合と比べて低くなることが多いことから、この制度を選択されている方も多いかと思います。

この2つの影響により、不動産業で簡易課税制度を選択されている方は2年足らずの間に消費税の負担は2.4倍と大幅な負担増になります。

なお、金融業および保険業につきましても、簡易課税制度を利用している場合のみなし仕入率が60%から50%へと引き下げられます。金融業及び保険業の方は、消費税率の増税と合わせると2年足らずの間に消費税の負担は2.5倍と、こちらも大幅な負担増になります。

ちなみに、簡易課税制度におけるみなし仕入率の引き下げは、平成27年4月1日以降に開始する課税期間から適用されます。(但し、平成26年9月30日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した場合、提出書記載の「適用開始課税期間」の初日から2年を経過するまでに開始する課税期間までは、従来のみなし仕入率を適用する経過措置が設けられています。)

父母や祖父母などからの住宅取得等資金の贈与の非課税措置

今回の税制改正では、期間限定で曾祖父母、祖父母、両親といった直系尊属から教育資金を一括贈与された場合についての非課税措置が目玉の一つとなっていますが、教育資金以外でも教育資金の場合と同様、曾祖父、曾祖母、祖父、祖母、父や母といった直系尊属から贈与を受けた場合の非課税措置を受けられるものがあります。

息子様やお孫様といった方が住宅を購入される場合、こちらも期間限定ですが、住宅購入資金の援助額のうち一定額までは贈与税が非課税となっています。

具体的には、平成26年12月31日までに、父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた方が、贈与を受けた次の年の3月15日までにその住宅取得等資金を、自身が住むために使う家屋の新築、購入や増改築等を行い、贈与を受けたお金をそれら新築、購入や増改築の費用に充てた場合、その家屋に、その3月15日までにご自身が住み始めるか、その後遅滞なくご自身が住み始めることが確実であると見込まれるときには、以下の金額まで非課税の措置を受けることが出来ます。

一定の基準を満たす省エネ等住宅の場合
平成25年・・・1,200万円
平成26年・・・1,000万円

上記以外の住宅の場合
平成25年・・・700万円
平成26年・・・500万円

この一定の基準を満たす省エネ等住宅についてですが、中古のマンションか家屋を購入される場合は、あまり当てにはしない方が良いというのが不動産業者の方のご意見でした。 この制度は、現在のところ、来年までの期間限定の予定であり、また、来年よりも今年の方が上限額が大きいです。 こちらの制度を使われたい場合は、今年中に住宅資金の贈与を受け3月15日までに物件をご購入されるよう検討を進められることをお勧め致します。

平成26年以降の上場株式等への減税措置の終了とその影響

来年の平成26年1月1日より、上場株式等の売買にともなう利益、配当金(総合課税によらない場合)に対する所得税および住民税が増税になります。といいましても、正確には一時的な減税措置が終了するだけではありますが。

本来、上場株式やREIT等の売買にともなう利益や総合課税によらない配当益に対する税率は、所得税15%+住民税5%で計20%でした。そして、これに復興増税分0.315%を加味することで、平成26年以降は税率は20.315%になります。

対して、平成25年、つまり今年いっぱいまでは、所得税7%+住民税3%で計10%。これに復興増税分0.147%を加え税率が10.147%と、本来の税率よりも軽減された税率で売買益や配当金に対する税金がすんでしまいます。

従って、含み益が出ている銘柄を保有している場合、今年12月末が近付いた段階で一旦含み益を実現して低い税率で譲渡益課税を済ませてしまった方が良い、ということで今年の年末近くに株式市場で株式売却の動きが出る可能性は考えておく必要もあるかと思います。

もっとも、このことが年末の株式相場に影響を与えるかというと、そうは言い切れないのではないかと個人的には考えています。

その理由として一番大きいのは、証券税制の改正の情報自体は市場は認識している、つまり皆知っている情報であるということです。

さらに、今回の証券税制の改正で影響があるのは個人の投資家のみであって法人には影響がないこと、年末近くに個人投資家の益出しの動きが出たとしても、益出しで手にした資金を再度別の銘柄に投資することも十分に考えられること、証券税制の改正による売買益に対する税率アップよりもアベノミクスや日銀の政策の行方いかんによる値動きの方が、投資家が最終的に手にする金額に与える影響が大きいこと、を考えると年末相場に対する上場株式等の譲渡益等に対する増税の影響についてはあまりナーバスになる必要はないのでは、と個人的には考えています。

もっとも、実際12月になってフタを開けてみると、上場株式等の含み益に対する増税前の益出しが大量に出てマーケットの需給が悪くなり株価が下がった、などとなっていたりするかもしれません。まだ半年以上先のことなど分かるわけがないわけで、だからこそ無責任に相場への影響に対して思うところを個人的に書けていたりもするわけであります。

日本版ISA NISAの上手な活用方法を考える

平成25年度の税制改正によって、平成26年1月より少額投資非課税制度(日本版ISA,NISA)が導入されます。

この制度は、少額投資非課税口座を開設してその口座内で上場株式、ETF,REITや株式投資信託等を購入すると、配当金や売却益などが、非課税となる制度です。

この制度は、1人年間100万円分の購入までで利用することが出来ます。そして、現在のところ、平成26年から平成35年までの10年間この制度の存続が予定されており、10年間にわたって毎年100万円分を上限に上場株式や株式投資信託を購入して利用することが可能です。

非課税の期間は5年間とされていますが、5年経過後も少額投資非課税口座(ISA口座)で購入した株式を保有し続けたい場合は、通常の特定口座や一般口座に移管することで購入した株式の保有を続けることもできます(この場合口座移管後の配当や値動きに対しては通常の株式保有と同様の課税がなされることになります)。あるいは翌年のISA口座、たとえば平成26年に購入した株式であれば平成31年のISA口座に移管するという方法をとることも可能です。

ただし、この日本版ISAの制度には落とし穴があります。正確には、私が落とし穴と思っているポイントがあります。 それは、通常の特定口座や一般口座でも上場株式等を利用していて、さらにISA口座を利用する場合ISA口座で損失が出ても、特定口座や一般口座の利益と相殺が出来ないという点です。

日本版ISAの制度を利用することで、利用しなかった場合と比べて逆に税金が増える可能性もあります。

日本版ISAの制度は年間100万円までの購入しか利用できないことを考えると、日本版ISAの制度を利用する場合でも通常の特定口座や一般口座との併用になる方が一般的かと思います。

では、どのように日本版ISAの制度を活用するのがよいか?

とにかく値上がりそう、あるいは配当が多くもらえそうな銘柄や商品から優先的に日本版ISAの制度を利用していくという方法も全くないわけではないとは思います。しかし、将来値上がりそうかなど、そう簡単には分かりませんし、配当が多い商品も、最終的な譲渡損益などまで考えると本当に有利なのか・・・。

個人的には、既存の特定口座や一般口座の含み損益の状況にもよりますが、以下の2つの活用法が比較的有利な活用法ではないかと考えます。

1つが、株式等の売買をする際に、通常の口座とISA口座で銘柄構成比率と取得単価が極力一致するようようにする。例えば、株式の売買時に必ず通常口座で注文を出す株数の半分の株数を非課税口座で注文を出すといった方法です。この方法のメリットは、ISA口座と通常の口座の損益の方向が一致するので、通常の口座で益が出てISA口座で損が出るという最悪のパターンを避けることが出来ます

もう1つは、値動きが激しい銘柄や商品をISA口座で購入し、値動きが乏しい商品を通常の口座で購入するという方法です。この場合、通常の口座で益が出てISA口座で損が出る可能性を抑えることよりも、値動きが激しい商品や銘柄で多額の売却益が出た場合の節税を行うことを重視する方法です。

具体的にどのような方法をとるか、あるいは方法を組み合わせるかについては、現在の含み損益の状況や、保有を考えている商品構成、銘柄構成の内容により異なってきます

個々の場合の具体的なISA口座の利用方法は、税法の知識よりも金融系の知識が問われることになるというのが私の感想です。

MRIの投資事件にみる危険な投資商品の一類型

MRIインターナショナルの投資事件がニュースになった際に作成したものの、書いた内容が当たり前すぎてボツにした原稿があったのですが、新日本監査法人時代に同じ監査チームで仕事をしていた五十嵐さんと別件で意見交換をしていた結果、金融リテラシーの向上に資するためには、分かっている人にとっては当たり前すぎることを話題にすることも大切と思い、以下公開することとしました。

これまで、資金を調達する側の立場も投資する側の立場も経験してきましたが、少なくとも言えることが一つあります。

それは、

1.不特定多数の
2.小口資金を(少なくとも百万円単位は小口)
3.派手な広告で集めていて
4.高い利回りを謳っている

場合、 高い確率でどこかで破たんするということです。

投資商品のニュースをウォッチされている方であれば、他にも同様の例がいくつも思い浮かぶかと思います。

資金を調達する側からすれば、限られた少数の方から大口の資金を集めた方が、不特定多数の方から小口の資金を集めるよりも手間もコストもかからないし、広告を打たずに資金が集まるのであれば広告を打つ費用なんて掛けたくないし、たとえ儲かる事業であっても低い利回りで投資家が集まる案件であれば、よりによって見ず知らずの小口の投資家なんかに好き好んで高い利回りを払うようなことは普通はしません。

好条件の商品で、わざわざ広告を打ってまで不特定多数の小口資金を集める理由はほぼ一つ。大口投資家が資金を出さない案件に対し、大口投資家に比べ投資に関する情報や知識に乏しい投資家に資金を出してもらうためです。

しかし、1,365億円もよく集まったものです。言い換えるならば、日本国民全員から1,000円ちょっとずつ集めたのと同じ金額です。

相続税申告のための不動産の現地調査日和

昨日は、相続税の申告のために、相続対象の不動産の現地調査に行ってきました。

ゴールデンウィークのちょうど良い季候に晴天にも恵まれ、さらに対象となる土地のなかには田園地帯にあるものもあり、現地調査はさながらピクニック。まさに不動産の現地調査にもってこいの日より。

しかし、爽やかな気分にさせてもらえる田園地帯の現地調査ではありますが、農地と住宅地が入り交じっているような地区は、相続税を算出する上での不動産の評価方法をどのように行うかで税額がかなり異なってくることが多いです。そして、検討すべき事項も非常に多いです。

不動産がらみの相続案件は10人税理士がいれば10人評価額が違ってくる、などと言われていますが、その最たる例の一つと言えるかと。 もっとも、こういう悩ましい案件こそが資産税に強い税理士の腕の見せ所でもありますが。

ちなみに写真は、現地調査の移動の途中で撮影した麦畑です。北部九州の田園地帯では、二毛作を行っている農地を結構見る気がします。 IMG_0288-2

平成25年度税制改正と贈与税への影響 その3

前回、贈与実施の年の1月1日時点で20歳以上の方が祖父、祖母、父、母といった直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税について、平成25年税制改正で平成27年以降贈与実施分よりどのように税制が変わるかお伝え致しました。今回は、その税制改正による贈与税の具体的影響額についてです。

以下、前回お伝えした金額に、基礎控除額110万円を加味して考えていきます。

基礎控除110万円を加味して年間410万円までの贈与については、今回の税制改正の影響がありませんので贈与税の税額が変わりません。

そして、年間510万円贈与の場合で贈与税額は55万円から50万円へと5万円の減税、年間710万円の贈与の場合で115万円から90万円へと25万円の減税、年間1,110万円の贈与で275万円から210万円へと65万円の減税、年間1,610万円の贈与で525万円から410万円へと115万円の減税、年間3,110万円の贈与で1,275万円から1,085万円へと190万円の減税、そこから年間4,610万円の贈与までは減税額は190万円で変わらず。

贈与額が年間4,610万円を超えると贈与税の減税額は減少していき、年間8,410万円の贈与では減税額は0、そして贈与額が年間8,410万円を超えると逆に増税となります。

今回の税制改正では、相続税は明らかに増税となっていますが、贈与税に関しては、贈与実施の年の1月1日時点で20歳以上の方が祖父、祖母、父、母といった直系尊属から贈与を受ける場合は年間8,410万円までの、それ以外の贈与の場合は年間3,610万円までの贈与の場合は、税制改正適用後のほうが贈与税が減少、あるいは同額となっています。つまり、同年内によほど多額の贈与を行わない限りは減税方向の改正となっています。

今回の税制改正で、個人事業から法人へという流れに加え、相続から生前贈与へという流れが税制面から指し示されたということが出来るのではないでしょうか。

平成25年度税制改正と贈与税への影響 その2

平成25年度税制改正で、平成27年分以降の贈与税は、贈与を受ける年の1月1日に20歳以上であるものが直系尊属から贈与を受ける場合と、それ以外の場合の2パターンで税率が分かれることになりました。今回は、そのうち贈与を受ける年の1月1日に20歳以上であるものが直系尊属から贈与を受ける場合について、改正後の贈与税でどのような影響が出るかについて見ていきます。

このパターンの贈与の場合、改正前と改正後では、以下のように税率が変更となります。

それぞれ、基礎控除額110万円を別として、
1.300万円から400万円までの贈与の部分に関して、贈与税の税率が15%から10%へと5%の減税。
2.400万円から600万円までの贈与の部分に関して、贈与税の税率が30%から20%へと10%の減税。
3.600万円から1,000万円までの贈与の部分に関して、贈与税の税率が40%から30%へと10%の減税。
4.1,000万円から1,500万円までの贈与の部分に関して、贈与税の税率が50%から40%へと10%の減税。
5.1,500万円から3,000万円までの贈与の部分に関して、贈与税の税率が50%から45%へと5%の減税。
6.4,500万円超の贈与の部分に関して、贈与税の税率が50%から55%へと5%の増税。

結果、300万円から400万円の部分の贈与が5%の減税、400万円から1,500万円までの部分が10%の減税、1,500万円から3,000万円の部分が5%の減税、4,500万円超の部分が5%の増税となっています。

このパターンの具体的な贈与税の影響額については、次回取り上げます。

平成25年度税制改正と贈与税への影響 その1

平成25年度税制改正では、贈与税の税率についても改正がありました。

今回の税制改正で、贈与税は、贈与を受ける年の1月1日に20歳以上であるものが直系尊属から贈与を受ける場合と、それ以外の場合の2パターンで税率が分かれることになりました。

今回は、うち上記それ以外の場合、つまり、直系尊属以外からの贈与、および、贈与を受ける年の1月1日に19歳以下であるものが直系尊属から贈与を受ける場合について、贈与税額にどのような影響が出るかについて取り上げます。

上記の贈与の場合においては、以下の2点において税制改正がなされています。

それぞれ、基礎控除額110万円を別として、
1.1,000万円から1,500万円の贈与の部分に関して、贈与税の税率が50%から45%へと5%の減税。 
2.3,000万円超の贈与の部分に関して、贈与税の税率が50%から55%へと5%の増税。

では具体的な影響額はいくらか。

基礎控除額110万円を加味すると、年間1,110万円までの贈与に関しては、今回の税制改正による贈与税額の変更はありません。そして、年間1,110万円から1,610万円までの範囲が5%減税となる結果、年間1,610万円から3,110万円までの贈与に関しては、25万円の減税となります。しかし、年間3,110万円からの範囲については5%増税ですので、年間3,610万円の贈与で、贈与税の減税部分と増税部分の効果が完全に相殺され、さらに、たとえば年間5,110万円贈与を行う場合は、75万円の増税となります。

ちなみに、この贈与税の改正はいつから適用かについてですが、相続税の改正と同じく、平成27年1月1日分より適用となります。

平成25年税制改正 所得税最高税率引き上げとその時期

平成25年度税制改正法案である「所得税法等の一部を改正する法律案」が、3月29日に参議院で可決されたことで、所得税の最高税率が40%から45%に引き上げられました。

所得税の最高税率が適用されるのは平成27年分の所得税からで、4,000万円を超える部分について適用があります。総所得金額が4,000万円以下であれば、平成25年度税制改正による所得税の増税の影響は受けません。

所得を稼ぐと、所得税以外にも住民税や、ご自身で事業を行っている方だと事業税も負担しなければなりません。所得税の増税適用以降は、4,000万円を超える総所得金額がある方は、100円多く稼ぐごとに、所得税+住民税に復興増税が加わって約56円、さらに個人で事業を営んでいれば事業の内容にもよりますが、翌年の事業税の損金算入効果まで織り込んで約58円の税負担が発生することになります。

総所得が4,000万円を超える方というのは非常に限られはしますが、今回の税制改正で人によっては相続税、消費税、所得税とトリプルの増税となるケースも出てきます。