海外中古不動産に係る損益通算等の特例 の創設

海外中古不動産について、近年、節税策として利用されることが流行っていました。

これにつき、税制改正で規制が入りました。

 

海外の建物は、日本の建物と比べて実態上耐用年数が非常に長いものがあるところ、日本の建物の耐用年数の計算を使用して実態よりも多くの減価償却費を発生させ、それにより発生する赤字と他の所得を損益通算し所得税の金額を圧縮するスキームが流行っていました。

 

今後は、上記の方法により海外の中古不動産で赤字が出た分について、他の所得との損益通算が出来なくなります。

 

もっとも、これにより計上出来なかった赤字については、物件の売却時に調整してくれます。

実態と乖離した計算上の減価償却の先取りにつき、他の損益との通算部分まではその先取りを認めない。ただ、先取りとなる分について過剰な減価償却部分を認めないだけであって、先取りできなかった分の所得については最後に調整されるという設計になっています。

 

この改正について、個人的には実態から乖離した形での過度な節税について規制したものであり、妥当な改正かなと思っています。

 

もっとも、この手法をアテにして長期のタックスプランニングを組まれていた方は予定が狂うこととなります。税制の大枠の趣旨から離れる形での節税対策については、少なくとも中長期での税制改正リスクについて考慮しておく必要があると私は思います。

 

上記改正は、2021年分からの適用となります。

フリーゾーンでの法人設立検討のためにドバイに行ってきました

1月の話になるのですが、フリーゾーンでの法人設立検討のためにドバイに行ってきました。

 

フリーゾーンとは、アラブ首長国連邦が設けている特区の制度で、フリーゾーンで法人を作ると、法人税の負担がなく、海外事業や国際投資を行うための中間拠点の会社等として使い勝手の良い会社となります。

 

フリーゾーンはアラブ首長国連邦内に数十箇所存在し、フリーゾーンによって行える業種が異なったりしますが、今回は、金融業のための法人設立の検討が目的であったため、DIFC(Dubai International Financial Centre、ドバイ国際金融センター)を訪問して来ました。

 

DIFCの外観

DIFCの外観

DIFC周辺の建物群

DIFC周辺の建物群

海外で税金がかからない会社というと、本当に全く税金が掛からないように思われるかもしれないですが、世の中そんなに甘くはないです。日本にいる限りは、どこの国を使おうと、基本的には日本で普通にかかるのと同程度の税金は発生するものと考えておく必要があります。

 

しかし、それでも法人税のかからない法人をドバイに作れると、租税条約が結ばれていないといった関係上、実質的に二重課税が発生するといった心配が避けられるケースもあり、今回の法人設立の検討へと至りました。

 

フリーゾーン内に法人を設立すると、確かに利益に連動して発生する法人税は無税となるのですが、日本の均等割に当たる、毎年必ず発生する税金が、以下全て為替レートにもよりますが年間140万円程度。その他、フリーゾーン内にオフィスを持つための家賃が最低クラスでも年間500万円程度。さらに、現地の会計事務所等への管理委託料等まで考えて行くと、下手すると年間1千万円コースの維持費が必要となってきます(他のフリーゾーンを使う場合は維持費はもっと安くて済みますが)。

 

これに見合う節税効果が出るには、相当の投資額や事業規模が必要となります。

 

海外を使って節税を夢見るのも、そう簡単ではないというお話でした。

2017年税制改正と相続対策の封じ込め(海外編)

配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しが騒がれている平成29年度与党税制大綱ですが、相続税、贈与税といった、いわゆる資産税関連で、これまで節税対策として行われてきた一部の節税策を封じこめるために、目立った改正がなされています。

今回は、そのうちの海外関連の改正について取り上げます。

今回の税制改正で、海外関連の改正としては、相続税等の納税義務の範囲の拡大が予定されています。

 

そのうち第一として、日本国籍を有する方々が海外に住んでいた場合に、日本で相続税を納める義務の範囲が広がるというものがあります。

日本国籍を有する方々について、これまで被相続人等の財産を渡す側の方と、相続人等の財産を貰う側の方がともに過去5年間のあいだ日本に住んでいなかった場合(もう少し書くと、この「住んでいる」の定義は非常に論点となる部分ではありますが)、国外の財産に対しては相続税や贈与税の納税義務の対象とはなりませんでした。

平成29年度の税制改正で、日本に住んでいなかった期間について、過去5年間であった判定期間が、過去10年間に延びることとなりました。

 

第二として、日本国籍を有しない方々についても、被相続人等の財産を渡す側の方が過去10年以内に日本で住んでいたことがあった場合、国外の財産についても相続税や贈与税の納税義務が発生することになりました。

 

一般の方にはなじみのない改正内容ではありますが、一部の富裕層の間では子弟を5年超留学や移住させるなどしてご自身もそれについて行かれるという、相続税や贈与税を逃れるための究極の相続対策が実際になされております。

相続対策のために海外に数年住むことを我慢されている方々に対しては、ダメージの大きい改正であると言えます。

 

なお、これらの税制改正は、平成29年4月1日以後の相続、遺贈、贈与に対して適用がなされることになります。

モザンビークに出張して来ました

今月は、国際税務の業務でモザンビークに出張して来ました。

モザンビークは、租税条約を締結している相手国が10カ国程度しかなく、普段日本で仕事を行っている私としては、新鮮な衝撃でした。

日本とも租税条約は締結されていないです。

もっとも、UAEのみに限定されますが、UAEとの租税条約では配当と利子の源泉税が0%となっており、UAEと取引を行う分には使い勝手は良いです。

モザンビークの件は、気が向けば引き続き取り上げていこうと思います。