平成25年度税制改正と贈与税への影響 その2

平成25年度税制改正で、平成27年分以降の贈与税は、贈与を受ける年の1月1日に20歳以上であるものが直系尊属から贈与を受ける場合と、それ以外の場合の2パターンで税率が分かれることになりました。今回は、そのうち贈与を受ける年の1月1日に20歳以上であるものが直系尊属から贈与を受ける場合について、改正後の贈与税でどのような影響が出るかについて見ていきます。

このパターンの贈与の場合、改正前と改正後では、以下のように税率が変更となります。

それぞれ、基礎控除額110万円を別として、
1.300万円から400万円までの贈与の部分に関して、贈与税の税率が15%から10%へと5%の減税。
2.400万円から600万円までの贈与の部分に関して、贈与税の税率が30%から20%へと10%の減税。
3.600万円から1,000万円までの贈与の部分に関して、贈与税の税率が40%から30%へと10%の減税。
4.1,000万円から1,500万円までの贈与の部分に関して、贈与税の税率が50%から40%へと10%の減税。
5.1,500万円から3,000万円までの贈与の部分に関して、贈与税の税率が50%から45%へと5%の減税。
6.4,500万円超の贈与の部分に関して、贈与税の税率が50%から55%へと5%の増税。

結果、300万円から400万円の部分の贈与が5%の減税、400万円から1,500万円までの部分が10%の減税、1,500万円から3,000万円の部分が5%の減税、4,500万円超の部分が5%の増税となっています。

このパターンの具体的な贈与税の影響額については、次回取り上げます。

平成25年度税制改正と贈与税への影響 その1

平成25年度税制改正では、贈与税の税率についても改正がありました。

今回の税制改正で、贈与税は、贈与を受ける年の1月1日に20歳以上であるものが直系尊属から贈与を受ける場合と、それ以外の場合の2パターンで税率が分かれることになりました。

今回は、うち上記それ以外の場合、つまり、直系尊属以外からの贈与、および、贈与を受ける年の1月1日に19歳以下であるものが直系尊属から贈与を受ける場合について、贈与税額にどのような影響が出るかについて取り上げます。

上記の贈与の場合においては、以下の2点において税制改正がなされています。

それぞれ、基礎控除額110万円を別として、
1.1,000万円から1,500万円の贈与の部分に関して、贈与税の税率が50%から45%へと5%の減税。 
2.3,000万円超の贈与の部分に関して、贈与税の税率が50%から55%へと5%の増税。

では具体的な影響額はいくらか。

基礎控除額110万円を加味すると、年間1,110万円までの贈与に関しては、今回の税制改正による贈与税額の変更はありません。そして、年間1,110万円から1,610万円までの範囲が5%減税となる結果、年間1,610万円から3,110万円までの贈与に関しては、25万円の減税となります。しかし、年間3,110万円からの範囲については5%増税ですので、年間3,610万円の贈与で、贈与税の減税部分と増税部分の効果が完全に相殺され、さらに、たとえば年間5,110万円贈与を行う場合は、75万円の増税となります。

ちなみに、この贈与税の改正はいつから適用かについてですが、相続税の改正と同じく、平成27年1月1日分より適用となります。

平成25年税制改正 所得税最高税率引き上げとその時期

平成25年度税制改正法案である「所得税法等の一部を改正する法律案」が、3月29日に参議院で可決されたことで、所得税の最高税率が40%から45%に引き上げられました。

所得税の最高税率が適用されるのは平成27年分の所得税からで、4,000万円を超える部分について適用があります。総所得金額が4,000万円以下であれば、平成25年度税制改正による所得税の増税の影響は受けません。

所得を稼ぐと、所得税以外にも住民税や、ご自身で事業を行っている方だと事業税も負担しなければなりません。所得税の増税適用以降は、4,000万円を超える総所得金額がある方は、100円多く稼ぐごとに、所得税+住民税に復興増税が加わって約56円、さらに個人で事業を営んでいれば事業の内容にもよりますが、翌年の事業税の損金算入効果まで織り込んで約58円の税負担が発生することになります。

総所得が4,000万円を超える方というのは非常に限られはしますが、今回の税制改正で人によっては相続税、消費税、所得税とトリプルの増税となるケースも出てきます。

非課税措置利用の教育資金一括贈与と資産運用

直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置を利用して贈与を行う場合、贈与は金銭で行う必要があります。

そして、銀行預金や信託受益権、証券会社などで取り扱っている有価証券といった形での運用が制度上要求されています。

さらにインターネットで商品を調べる限り、現実問題としてこの制度に対応した商品を出しているのはいまのところ信託銀行以外だと一部の銀行のみのようです。

従って、いくら相続税が発生するような資産を持っている場合であっても、その資産の内訳が自社株や事業用資産、土地や建物などの不動産が中心で資金に余裕がないとこの制度は利用できません。この制度が出来たことによって、相続税・贈与税まで考慮した場合、一部不動産を売却されて売却資金を贈与に充てられたほうがより多くの資産を残せることになる方もそれなりに出てくるのではないかと思います。

例えばお孫さんが10人おられる方であれば、現預金であれば最大1億5千万円まで無税で贈与が出来てしまいます。たとえば福岡だと、1億5千万円を準備するために、まあまあのマンション1棟を売却するという選択肢も十分出て来かねないわけです。

お子様やお孫様の教育資金は、この制度を利用しなくても発生するものではあります。とはいうものの、教育資金が必要になるタイミングまで引き続き事業用資産や不動産という形で運用するか、この制度を利用するために一旦現金化して信託銀行などの対応商品で運用するかには非常に大きな違いがあります。

この制度を利用せずに既存の資産を持ち続けるか、この制度を利用するために資産の組み替えを行うか、場合によっては非常に悩ましい問題になるのでは、と考えています。

贈与税の非課税措置を利用した教育資金一括贈与と節税効果

今回の税制改正で、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置が平成27年12月31日まで(もっとも、将来的に期間が延びる可能性もありますが)の期間限定で導入されました。

この制度は、曾祖父、曾祖母、祖父、祖母、父、母といった直系尊属がひ孫、孫や子に対しして教育資金として一定の信託銀行、銀行、証券会社などに金銭を拠出した場合に適用を受けることができます。

では、これまでも教育で必要になった資金をたとえば曾祖父や祖母が出したからといって贈与税が課されていたか。実は、そういう訳ではありません。これまでも非課税でした。

今回の制度がこれまでとは違うのは、教育資金が必要になったそのときにではなく、まだ教育資金が必要でないタイミングで事前に贈与を行っても贈与税が非課税とされる点です。

とすると、結局は非課税になる資金を前に贈与するか後に贈与するかというタイミングの違いだけなので、一見この制度はあまり意味が無いのでは、と思われるかもしれません。

しかし、たとえば曾祖父がひ孫に対して教育資金を贈与することを考えた場合、たとえばひ孫が3歳のときに曾祖父が亡くなってしまうとすると、非課税で曾孫の大学の授業料といった将来の教育費用を出してあげることは、これまではできませんでした。

なぜなら、事前に直接ひ孫に贈与するとまだ必要になっていない教育資金に対するなんらかの財産を贈与することになり贈与税の対象となってしまい、また、教育資金が必要となるタイミングでひ孫の教育資金を出してあげるにしても、いったん祖父、祖母や父、母を相続なり贈与で介すことになり、一度は相続税または贈与税の対象となってしまうからです。

しかし、この制度を利用すれば、たとえばひ孫が1歳のときに大学や大学院卒業までの教育資金を一括して贈与することで、贈与税が課税されることなく将来の教育資金を出してあげることが可能になります。

次回も、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置について別の切り口で取り上げたいと思います。

相続時精算課税と暦年贈与の有利不利について

暦年贈与よりも相続時精算課税を利用することをお勧め出来る場合についてなのですが、

1.これから生む収益+将来の評価額が、現在の評価額よりも高くなることが見込まれる資産がある場合
2.税務的な財産評価上の問題で、資産を生前のあるタイミングで贈与すると評価額が下がる場合
3.最終的により多くの財産を下の世代に残したい、という以外の理由で早めに多額の財産を移転させたい場合

のどれかに該当して、「はじめて」相続時精算課税を利用したほうが良い「可能性」が出てくる、裏を返せばこれらの条件に該当しない場合は相続時精算課税を利用する意味はないと考えています。

しかし、

1.については土地の値上がりが当たり前だった昔ならともかく、低金利下、そして高収益が見込める資産もこのご時世そんなには存在しない。とうことで該当するケースは限られる(インフレ傾向が出てくればまた別ですが)。
2.については、そうなるケースはあれど、これに該当するという結論に行き着くためにはかなり本格的な相続対策の検討が必要。
3.についても、このようなケースはレアケース。

そう考えると、簡単には成り立たない条件のどれかに該当してはじめて検討のスタート地点に立てる制度であり、お勧めできるケースは極めて限られると私は考えています。

たまたま相続時精算課税についての質問が続いたので話題にしてみました。

平成25年税制改正と相続税増税の影響 その2

平成25年の税制改正で、相続税の基礎控除が平成27年1月以降減額されることとなりました。

相続税は、相続する財産がある場合に必ず課税されるわけではありません。相続財産の相続税の評価額から基礎控除を差し引き、差し引いた後の評価額がプラスであればその評価額に対して課税がなされます。

つまり、相続財産の評価額が基礎控除の金額を超えていなければ、相続税は発生しません。

これまでは、基礎控除の額は5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)でした。これが、平成27年以降は改正以前の6掛けとなり、3,000万円+(600万円×法定相続人の数)となります。例えば、相続人が3人の場合、基礎控除の額は8,000万円から4,800万円に下がります。

基礎控除の額の引き下げで注意しなければいけないのは、基礎控除額の引き下げがなくても相続税が発生していた人にとっても、基礎控除の引き下げにより相続税額が増加するということです。

例えば、相続人が3人で相続財産の相続税評価額が基礎控除の控除前で1億円であった場合、相続人が配偶者+子2人であれば、配偶者の税額軽減適用後で改正前の相続税額が100万円だったのが290万円に、相続人が子3人であれば、改正前の相続税額が200万円だったのが630万円になります。

このように、基礎控除の減額は、今回の税制改正によって相続税がはじめて発生するようになる方に限らず、これまでも相続税が発生する状況であった方にとっても十分に影響のある内容となっています。

平成25年税制改正と相続税増税の影響 その1

先月(2013年)3月29日に、平成25年度税制改正法案である「所得税法等の一部を改正する法律案」及び「地方税法の一部を改正する法律案」が、参議院で可決、成立となりました。

今回の税制改正で、相続税の基本的な部分で2つのポイントで増税となる改正がなされています。

1つが、二億円を超え三億円以下の金額に対する税率が40%から45%に、六億円を超える金額に対する税率が50%から55%となる、高額な一部金額部分に対する税率のアップです。

そしてもう1つが、基礎控除の減額です。

うち、前者の税率アップについて結論から申し上げますと、ここでいう「金額」(金額が何を指すかという説明は今回は省きます)が二億円を超える方は極めて限られます。おそらく、福岡国税局管内(福岡県、佐賀県、長崎県)でこの改正の影響を受ける相続の件数は、多めにみても年30件もいかないのでは、と思われます。

後者の基礎控除の減額ですが、こちらは相続税の課税額が発生するラインが下がることになります。従って、今まで相続税が発生していた人全員に加え、今までであれば相続税が発生しなかった人も影響を受けることになります。

基礎控除の減額の具体的内容と相続税額の影響については、次回以降の更新で触れていく予定です。

(追記) ちなみに、いつからこの改正が適用されるかですが、平成27年1月1日より適用です。よく聞かれるので追記しました。