直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置を利用して贈与を行う場合、贈与は金銭で行う必要があります。

そして、銀行預金や信託受益権、証券会社などで取り扱っている有価証券といった形での運用が制度上要求されています。

さらにインターネットで商品を調べる限り、現実問題としてこの制度に対応した商品を出しているのはいまのところ信託銀行以外だと一部の銀行のみのようです。

従って、いくら相続税が発生するような資産を持っている場合であっても、その資産の内訳が自社株や事業用資産、土地や建物などの不動産が中心で資金に余裕がないとこの制度は利用できません。この制度が出来たことによって、相続税・贈与税まで考慮した場合、一部不動産を売却されて売却資金を贈与に充てられたほうがより多くの資産を残せることになる方もそれなりに出てくるのではないかと思います。

例えばお孫さんが10人おられる方であれば、現預金であれば最大1億5千万円まで無税で贈与が出来てしまいます。たとえば福岡だと、1億5千万円を準備するために、まあまあのマンション1棟を売却するという選択肢も十分出て来かねないわけです。

お子様やお孫様の教育資金は、この制度を利用しなくても発生するものではあります。とはいうものの、教育資金が必要になるタイミングまで引き続き事業用資産や不動産という形で運用するか、この制度を利用するために一旦現金化して信託銀行などの対応商品で運用するかには非常に大きな違いがあります。

この制度を利用せずに既存の資産を持ち続けるか、この制度を利用するために資産の組み替えを行うか、場合によっては非常に悩ましい問題になるのでは、と考えています。