ビットコイン等の仮想通貨と個人の税金

ビットコインの仮想通貨を個人で売買した場合の所得税の扱いについて、国税庁より所得区分の取扱いが先日公表されました。

 

それによれば、事業活動により発生した損益等の場合を除き、原則として雑所得として扱われることとなります。通常の方の場合、ビットコインの売却益は雑所得として扱われると考えて良いでしょう。

 

雑所得となる場合の税率ですが、他の総合課税の対象となる所得と合算しての累進課税となります。

 

従いまして、ビットコインで同じ金額の利益を得た場合でも、他に所得がない方と比較して、給与や事業所得がある方は、より高い税率となります。

 

例えば、他に所得があまりないような方の場合、住民税との合算で約15%の税率で済むことになりますが、高額の給与や事業所得等がある方の場合、税率は住民税との合算で最大約55%程度となります。

 

なお、雑所得となる場合、雑所得間でしか損益の通算が出来ません。大多数の方の場合、仮想通貨の売却益が発生し雑所得が発生すると、所得税の納税は不可避であると考えて頂いた方がよいかと思います。

 

ちなみに、ビットコイン以外の仮想通貨について、国税庁が今回示した見解に記載はありませんが、少なくともビットコインと同じような仕組みの仮想通貨である限りは、同様の所得区分になると考えられます。

 

なお、消費税に関してですが、平成29年7月1日以降は非課税扱いとなっています。

フリーゾーンでの法人設立検討のためにドバイに行ってきました

1月の話になるのですが、フリーゾーンでの法人設立検討のためにドバイに行ってきました。

 

フリーゾーンとは、アラブ首長国連邦が設けている特区の制度で、フリーゾーンで法人を作ると、法人税の負担がなく、海外事業や国際投資を行うための中間拠点の会社等として使い勝手の良い会社となります。

 

フリーゾーンはアラブ首長国連邦内に数十箇所存在し、フリーゾーンによって行える業種が異なったりしますが、今回は、金融業のための法人設立の検討が目的であったため、DIFC(Dubai International Financial Centre、ドバイ国際金融センター)を訪問して来ました。

 

DIFCの外観

DIFCの外観

DIFC周辺の建物群

DIFC周辺の建物群

海外で税金がかからない会社というと、本当に全く税金が掛からないように思われるかもしれないですが、世の中そんなに甘くはないです。日本にいる限りは、どこの国を使おうと、基本的には日本で普通にかかるのと同程度の税金は発生するものと考えておく必要があります。

 

しかし、それでも法人税のかからない法人をドバイに作れると、租税条約が結ばれていないといった関係上、実質的に二重課税が発生するといった心配が避けられるケースもあり、今回の法人設立の検討へと至りました。

 

フリーゾーン内に法人を設立すると、確かに利益に連動して発生する法人税は無税となるのですが、日本の均等割に当たる、毎年必ず発生する税金が、以下全て為替レートにもよりますが年間140万円程度。その他、フリーゾーン内にオフィスを持つための家賃が最低クラスでも年間500万円程度。さらに、現地の会計事務所等への管理委託料等まで考えて行くと、下手すると年間1千万円コースの維持費が必要となってきます(他のフリーゾーンを使う場合は維持費はもっと安くて済みますが)。

 

これに見合う節税効果が出るには、相当の投資額や事業規模が必要となります。

 

海外を使って節税を夢見るのも、そう簡単ではないというお話でした。

今年より拡充されたNISAと、その注意点

NISAの制度が今年2016(平成28)年より改正され、利用対象者及び上限額について拡充が行われました。

 

NISAとは、少額投資非課税口座を開設してその口座内で上場株式、ETF,REITや株式投資信託等を購入すると、配当金や売却益などが、非課税となる制度です。

平たく言えば、少額の投資についてこの制度を使えば、儲かっても税金がかからなくて済むという制度です。

 

昨年の平成27年までは、1人年間100万円分の購入分までについて利用することが出来ました。これが、今年平成28年より1人年間120万円分の購入分まで利用することが出来るようになりました。

 

ちなみに、このNISAの制度。現在のところ期間限定です。平成35年までこの制度の存続が予定されており、平成35年までの残り8年間にわたって毎年120万円分を上限に上場株式や株式投資信託を購入して利用することが可能となっています。

 

また、ジュニアNISAと呼ばれる制度が新しく始まり、これまでこの制度を利用できなかった、0歳から19歳までの未成年も年間80万円を上限にこの制度を利用することが出来るようになりました。

 

 

NISAの注意点ですが、従前からの注意点については以前「日本版ISA NISAの上手な活用方法を考える」で取り上げましたので、こちらをご覧頂ければと思います。

 

さらに、今回新たにスタートするジュニアNISAの場合、上場株式等の購入資金の原資についても注意する必要があります。

具体的には、ご本人がもともとお持ちの資金を原資に投資を行うのではなく、例えばお爺さんよりお金をもらってなど、他の方から資金を貰ってジュニアNISAを利用した投資を行う場合、貰った資金について贈与税の非課税限度枠を超える場合は、通常の贈与と同様贈与税が発生することになります。

 

ジュニアNISAの上限額は年間80万円のため、贈与税の非課税限度枠を超えることはないと考えられる方もおられるかと思います。しかし、例えばジュニアNISAのために80万円、その他に100万円、と年180万円を贈与した場合、合算して贈与税の申告を行い納税する必要があります。

このことは、ジュニアNISAにだけでなく通常のNISAであっても同じです。しかし、ジュニアNISAの場合、資金の贈与とセットで行われる場合が多いと考えられるため、とくに注意しておく必要があります。

平成26年以降の上場株式等への減税措置の終了とその影響

来年の平成26年1月1日より、上場株式等の売買にともなう利益、配当金(総合課税によらない場合)に対する所得税および住民税が増税になります。といいましても、正確には一時的な減税措置が終了するだけではありますが。

本来、上場株式やREIT等の売買にともなう利益や総合課税によらない配当益に対する税率は、所得税15%+住民税5%で計20%でした。そして、これに復興増税分0.315%を加味することで、平成26年以降は税率は20.315%になります。

対して、平成25年、つまり今年いっぱいまでは、所得税7%+住民税3%で計10%。これに復興増税分0.147%を加え税率が10.147%と、本来の税率よりも軽減された税率で売買益や配当金に対する税金がすんでしまいます。

従って、含み益が出ている銘柄を保有している場合、今年12月末が近付いた段階で一旦含み益を実現して低い税率で譲渡益課税を済ませてしまった方が良い、ということで今年の年末近くに株式市場で株式売却の動きが出る可能性は考えておく必要もあるかと思います。

もっとも、このことが年末の株式相場に影響を与えるかというと、そうは言い切れないのではないかと個人的には考えています。

その理由として一番大きいのは、証券税制の改正の情報自体は市場は認識している、つまり皆知っている情報であるということです。

さらに、今回の証券税制の改正で影響があるのは個人の投資家のみであって法人には影響がないこと、年末近くに個人投資家の益出しの動きが出たとしても、益出しで手にした資金を再度別の銘柄に投資することも十分に考えられること、証券税制の改正による売買益に対する税率アップよりもアベノミクスや日銀の政策の行方いかんによる値動きの方が、投資家が最終的に手にする金額に与える影響が大きいこと、を考えると年末相場に対する上場株式等の譲渡益等に対する増税の影響についてはあまりナーバスになる必要はないのでは、と個人的には考えています。

もっとも、実際12月になってフタを開けてみると、上場株式等の含み益に対する増税前の益出しが大量に出てマーケットの需給が悪くなり株価が下がった、などとなっていたりするかもしれません。まだ半年以上先のことなど分かるわけがないわけで、だからこそ無責任に相場への影響に対して思うところを個人的に書けていたりもするわけであります。

日本版ISA NISAの上手な活用方法を考える

平成25年度の税制改正によって、平成26年1月より少額投資非課税制度(日本版ISA,NISA)が導入されます。

この制度は、少額投資非課税口座を開設してその口座内で上場株式、ETF,REITや株式投資信託等を購入すると、配当金や売却益などが、非課税となる制度です。

この制度は、1人年間100万円分の購入までで利用することが出来ます。そして、現在のところ、平成26年から平成35年までの10年間この制度の存続が予定されており、10年間にわたって毎年100万円分を上限に上場株式や株式投資信託を購入して利用することが可能です。

非課税の期間は5年間とされていますが、5年経過後も少額投資非課税口座(ISA口座)で購入した株式を保有し続けたい場合は、通常の特定口座や一般口座に移管することで購入した株式の保有を続けることもできます(この場合口座移管後の配当や値動きに対しては通常の株式保有と同様の課税がなされることになります)。あるいは翌年のISA口座、たとえば平成26年に購入した株式であれば平成31年のISA口座に移管するという方法をとることも可能です。

ただし、この日本版ISAの制度には落とし穴があります。正確には、私が落とし穴と思っているポイントがあります。 それは、通常の特定口座や一般口座でも上場株式等を利用していて、さらにISA口座を利用する場合ISA口座で損失が出ても、特定口座や一般口座の利益と相殺が出来ないという点です。

日本版ISAの制度を利用することで、利用しなかった場合と比べて逆に税金が増える可能性もあります。

日本版ISAの制度は年間100万円までの購入しか利用できないことを考えると、日本版ISAの制度を利用する場合でも通常の特定口座や一般口座との併用になる方が一般的かと思います。

では、どのように日本版ISAの制度を活用するのがよいか?

とにかく値上がりそう、あるいは配当が多くもらえそうな銘柄や商品から優先的に日本版ISAの制度を利用していくという方法も全くないわけではないとは思います。しかし、将来値上がりそうかなど、そう簡単には分かりませんし、配当が多い商品も、最終的な譲渡損益などまで考えると本当に有利なのか・・・。

個人的には、既存の特定口座や一般口座の含み損益の状況にもよりますが、以下の2つの活用法が比較的有利な活用法ではないかと考えます。

1つが、株式等の売買をする際に、通常の口座とISA口座で銘柄構成比率と取得単価が極力一致するようようにする。例えば、株式の売買時に必ず通常口座で注文を出す株数の半分の株数を非課税口座で注文を出すといった方法です。この方法のメリットは、ISA口座と通常の口座の損益の方向が一致するので、通常の口座で益が出てISA口座で損が出るという最悪のパターンを避けることが出来ます

もう1つは、値動きが激しい銘柄や商品をISA口座で購入し、値動きが乏しい商品を通常の口座で購入するという方法です。この場合、通常の口座で益が出てISA口座で損が出る可能性を抑えることよりも、値動きが激しい商品や銘柄で多額の売却益が出た場合の節税を行うことを重視する方法です。

具体的にどのような方法をとるか、あるいは方法を組み合わせるかについては、現在の含み損益の状況や、保有を考えている商品構成、銘柄構成の内容により異なってきます

個々の場合の具体的なISA口座の利用方法は、税法の知識よりも金融系の知識が問われることになるというのが私の感想です。