タワーマンション(タワマン)による相続税対策の落とし穴 -その2/2-

前回、タワーマンション(タワマン)による相続税対策の落とし穴 -その1/2- にて、タワーマンションのプレミアムの件について取り上げました。

では、どの程度プレミアムを出して購入しても、相続税の節税効果でペイすることが出来るのでしょうか。

 

以下の条件で考えてみます。

 

前提条件

相続財産:現金2億円

相続人:兄弟2人のみ

 

(1)相続財産のうち1億円を使って、タワーマンションの最上階を購入。相続税評価額を2千万円に80%圧縮。

 

相続税評価額の圧縮額:1億円-2千万円=8千万円

相続税の節税額:8千万円×限界税率30%=2千4百万円

 

これだけで見ると、相続税を2千万円以上節税出来るため、2千万円のプレミアムを上乗せして購入してもペイしそうに見えます

 

 

では、タワーマンション以外の不動産を使って同じように節税をはかった場合はどうでしょうか?

 

(2)相続財産のうち1億円を使って、マンションを購入。相続税評価額が4千万円を60%圧縮。

 

相続税評価額の圧縮額:1億円-3千万円=7千万円

相続税の節税額:6千万円×限界税率30%=1千8百万円

 

(1)のケースと(2)のケースを比較すると、節税額は6百万円の違いとなります。物件の価格と比較すると6%分の違いでしかありません。タワーワンションだからとわざわざ有り難がってみても、10%もプレミアムがついてしまうと、節税効果分以上の高値買いとなってしまいます

 

 

タワーマンションによる節税方法は、リーマンショック前から富裕層を得意とする税理士事務所界隈では言われている、もはや手垢のつきまくった手法です。

 

割高な価格で買った物件を割高なまま売り抜けられれば良いですが、その保証がないことは認識しておくべきです。

 

 

今後のブログで取り上げようと思いますが、タワーマンションほどではないにしても、タワーマンション以外でも市場の取引価格と相続税評価額と乖離が激しい不動産は存在します。

 

いくらタワーマンションが節税対策になるとはいっても、その物件が節税効果以上に割高であれば意味がありません。節税効果と意味ではタワーマンションほど面白くなくても、節税目的の手垢のあまりついていない、節税目的でなくてもそれなりに経営が成り立つ物件を探された方がいいのでは、と私は考えます。

タワーマンション(タワマン)による相続税対策の落とし穴 -その1/2-

最近、世間一般でもタワーマンション(タワマン)を購入することで相続税を節税する手法が有名になってきました。

 

市場価値の高いタワーマンションの最上階や羨望の良い部屋を購入します。当然、市場価値は同じタワーマンションの他の部屋よりも高いです。

しかし、相続税評価額は、路線価と固定資産税評価額により画一的に評価されます。

しかも、タワーマンションは土地の持分割合が低く、資産価値の中でより相続税評価額が低く出やすい建物の価値のウエイトが高くなります。

結果、区分所有しているタワーマンションの部屋の相続税評価額は、その市場価格と比べて大幅に低くなります。

 

 不動産業者も、相続税増税を機会に相続税対策としてタワーマンションの販売に熱を入れています。

 

ところで、このタワーマンションによる節税方法、落とし穴はないのでしょうか?

 

このタワーマンションによる相続税対策、最大の問題点は、タワーマンションによる節税手法が有名になりすぎた点にあると私は考えます。

 

節税方法として知名度が出ると、当然、相続対策での買いニーズが高まります。結果、タワーマンションで相続税対策に適した部屋にはプレミアムが付くことになります。

 

では、タワーマンション購入時のプレミアムがどの程度であれば、相続税の節税効果でペイすることが出来るのでしょうか?

それについては、次回取り上げます。

夫婦間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除と、その注意点

ご結婚されて20年以上の夫婦について、夫婦間でご自身が住まわれる不動産の贈与を行われる場合、贈与税の申告上、通常の年額110万円の控除に加え最高2,000万円まで贈与の金額から控除できる制度があります。これを、夫婦間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除と呼んでいます。

 

具体的には、夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に、居住用不動産の贈与を行うか、居住用不動産を取得するための金銭の贈与を行ってその翌年の3月15日までに居住を開始、その後も引き続き住み続ける見込みであるある場合に、贈与税の申告の際に贈与額から、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除を行うことが出来ます。つまり、2,110万円まで贈与税が課されることなく贈与を行うことが出来ます。

 

さらに言えば、この制度で不動産の購入資金でなく不動産自体を贈与する場合、贈与税を計算するさいの不動産の評価額は通常実際の時価よりも安くなります。よって、不動産の形で贈与を行う場合、実際の非課税限度額は通常2,110万円よりも大きくなります

 

ここで注意しなければならない点が、この制度を利用することで贈与税は安くなりますが、不動産の所有者が変わることによる登録免許税、不動産取得税は通常通り課税されることです。登録免許税、不動産取得税は贈与より相続の場合の方が安く済みます。よって、将来相続税が発生しない場合は、税額負担という観点で言えば、あえてこの制度を利用しない方がトータルで支払う税金は安くなることになります。

 

その他の注意点としては、この制度は同じ配偶者からの贈与については一生に「一度」しか適用を受けることが出来ないこと。また、この制度を利用する場合は一定の添付書類をそろえて贈与税の申告を行う必要があることなどが挙げられます。

不動産業と消費税の二重の増税

消費税の税率について、今年の4月に地方消費税の税率と合わせて8%となり、さらに来年10月には10%となることはご存じの方は多いかと思います。

この増税とは別に、不動産業を行われている方で簡易課税制度を選択されている方は消費税が増税されます。

具体的には、簡易課税制度のみなし税率が50%から40%へと引き下げられます。

簡易課税制度とは、課税売上高の一定割合を課税仕入高とみなして仕入控除税額の金額を計算する制度のことです。この制度は、前々年又は前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択可能です。原則課税と比べて経理の手間が少なくて済むこと、税額が原則課税の場合と比べて低くなることが多いことから、この制度を選択されている方も多いかと思います。

この2つの影響により、不動産業で簡易課税制度を選択されている方は2年足らずの間に消費税の負担は2.4倍と大幅な負担増になります。

なお、金融業および保険業につきましても、簡易課税制度を利用している場合のみなし仕入率が60%から50%へと引き下げられます。金融業及び保険業の方は、消費税率の増税と合わせると2年足らずの間に消費税の負担は2.5倍と、こちらも大幅な負担増になります。

ちなみに、簡易課税制度におけるみなし仕入率の引き下げは、平成27年4月1日以降に開始する課税期間から適用されます。(但し、平成26年9月30日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した場合、提出書記載の「適用開始課税期間」の初日から2年を経過するまでに開始する課税期間までは、従来のみなし仕入率を適用する経過措置が設けられています。)

父母や祖父母などからの住宅取得等資金の贈与の非課税措置

今回の税制改正では、期間限定で曾祖父母、祖父母、両親といった直系尊属から教育資金を一括贈与された場合についての非課税措置が目玉の一つとなっていますが、教育資金以外でも教育資金の場合と同様、曾祖父、曾祖母、祖父、祖母、父や母といった直系尊属から贈与を受けた場合の非課税措置を受けられるものがあります。

息子様やお孫様といった方が住宅を購入される場合、こちらも期間限定ですが、住宅購入資金の援助額のうち一定額までは贈与税が非課税となっています。

具体的には、平成26年12月31日までに、父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた方が、贈与を受けた次の年の3月15日までにその住宅取得等資金を、自身が住むために使う家屋の新築、購入や増改築等を行い、贈与を受けたお金をそれら新築、購入や増改築の費用に充てた場合、その家屋に、その3月15日までにご自身が住み始めるか、その後遅滞なくご自身が住み始めることが確実であると見込まれるときには、以下の金額まで非課税の措置を受けることが出来ます。

一定の基準を満たす省エネ等住宅の場合
平成25年・・・1,200万円
平成26年・・・1,000万円

上記以外の住宅の場合
平成25年・・・700万円
平成26年・・・500万円

この一定の基準を満たす省エネ等住宅についてですが、中古のマンションか家屋を購入される場合は、あまり当てにはしない方が良いというのが不動産業者の方のご意見でした。 この制度は、現在のところ、来年までの期間限定の予定であり、また、来年よりも今年の方が上限額が大きいです。 こちらの制度を使われたい場合は、今年中に住宅資金の贈与を受け3月15日までに物件をご購入されるよう検討を進められることをお勧め致します。

相続税申告のための不動産の現地調査日和

昨日は、相続税の申告のために、相続対象の不動産の現地調査に行ってきました。

ゴールデンウィークのちょうど良い季候に晴天にも恵まれ、さらに対象となる土地のなかには田園地帯にあるものもあり、現地調査はさながらピクニック。まさに不動産の現地調査にもってこいの日より。

しかし、爽やかな気分にさせてもらえる田園地帯の現地調査ではありますが、農地と住宅地が入り交じっているような地区は、相続税を算出する上での不動産の評価方法をどのように行うかで税額がかなり異なってくることが多いです。そして、検討すべき事項も非常に多いです。

不動産がらみの相続案件は10人税理士がいれば10人評価額が違ってくる、などと言われていますが、その最たる例の一つと言えるかと。 もっとも、こういう悩ましい案件こそが資産税に強い税理士の腕の見せ所でもありますが。

ちなみに写真は、現地調査の移動の途中で撮影した麦畑です。北部九州の田園地帯では、二毛作を行っている農地を結構見る気がします。 IMG_0288-2

非課税措置利用の教育資金一括贈与と資産運用

直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置を利用して贈与を行う場合、贈与は金銭で行う必要があります。

そして、銀行預金や信託受益権、証券会社などで取り扱っている有価証券といった形での運用が制度上要求されています。

さらにインターネットで商品を調べる限り、現実問題としてこの制度に対応した商品を出しているのはいまのところ信託銀行以外だと一部の銀行のみのようです。

従って、いくら相続税が発生するような資産を持っている場合であっても、その資産の内訳が自社株や事業用資産、土地や建物などの不動産が中心で資金に余裕がないとこの制度は利用できません。この制度が出来たことによって、相続税・贈与税まで考慮した場合、一部不動産を売却されて売却資金を贈与に充てられたほうがより多くの資産を残せることになる方もそれなりに出てくるのではないかと思います。

例えばお孫さんが10人おられる方であれば、現預金であれば最大1億5千万円まで無税で贈与が出来てしまいます。たとえば福岡だと、1億5千万円を準備するために、まあまあのマンション1棟を売却するという選択肢も十分出て来かねないわけです。

お子様やお孫様の教育資金は、この制度を利用しなくても発生するものではあります。とはいうものの、教育資金が必要になるタイミングまで引き続き事業用資産や不動産という形で運用するか、この制度を利用するために一旦現金化して信託銀行などの対応商品で運用するかには非常に大きな違いがあります。

この制度を利用せずに既存の資産を持ち続けるか、この制度を利用するために資産の組み替えを行うか、場合によっては非常に悩ましい問題になるのでは、と考えています。