基礎控除改正と社長給与

2020年度から所得税の基礎控除が見直されることなりました。

基礎控除とは、所得税の所得の計算上全員が一律に差し引くことが出来る控除のことです。

これまでは毎年38万円を控除出来ましたが、2020年度以降はこれが10万円増額され毎年48万円になります。

 

と同時に、基礎控除の対象者が全員でなくなりました。一定以上の所得のある方が基礎控除の対象外となります。

具体的には、合計所得が24百万円を超えてくると基礎控除の金額が減額され、25百万円を超えると基礎控除が0となります。

住民税の基礎控除についても、概ね同様の改正がなされます。

 

合計所得が24百万円前後の方の場合、大体の方について今後この基礎控除がフルで受けられるか0になるかで、

手取額が20万円強違ってくることとなります。

 

社長さんでちょうど月額の役員給与を2百万円前後で設定されている方について、

この税制改正を踏まえ、合計所得が24百万円以内に収まるようにするかというのも今後は1つの考慮事項と

なって来るのではと思います。

ついに統一化された地方税電子納税のシステムがスタートします

平成31年10月1日より、地方税共通納税システムがスタートします。

 

地方税共通納税システムとはすべての自治体(都道府県、市町村)に対して利用できる電子納税のシステムです。

 

たとえば、これまで福岡市に本社がある会社であれば国税に加え福岡市は電子納税に対応していても福岡県が電子納税に対応していなかったため、結局金融機関の窓口等に納税に行く必要がありました。

 

これが、地方税共通納税システムのスタート後はすべての自治体で電子納税が可能となります。

 

電子納税の方法には、インターネットバンキングを利用する方法のほか、ダイレクト納付方式によるインターネットバンキングの利用がない場合の対応もなされています。

 

また、対応税目も主要な地方税目はカバーされています。

 

地方税共通納税システムのスタートにより、これまで煩雑で分かりづらかった地方税の納税が統一的に行えるようになり、納税者にとってはより便利となります。

 

教育資金贈与の非課税措置の縮小検討と2019年度税制改正

2019年度の税制改正において、直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置の縮小が議論されていると、日本経済新聞の記事にありました。

直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置とは、曾祖父、曾祖母、祖父、祖母、父、母といった直系尊属がひ孫、孫や子に対しして教育資金として一定の信託銀行、銀行、証券会社などに金銭を拠出した場合につき、上限1,500万円まで贈与につき贈与税を非課税とするものです。

この教育資金の贈与を受けた方は、対象となる学費等の費用にこの教育資金を充てることが出来ます。仮に、贈与を受けた教育資金を使い切れなかった場合、贈与を受けられた方が30歳になったときに、残額に対して通常の贈与税が課税される形で、この制度の利用が終了することとなります。

この制度は、教育資金に充てる金額について贈与額がまるまる非課税となるため、現預金に余力のある方の将来の相続税の節税について非常に効果的であり、制度の導入時にも記事で取り上げました。

制度の縮小内容の案としては、贈与の対象金額の縮小や、贈与を受ける方に所得制限を設ける案が挙げられているようです。

この制度は、もともと2018年度末で一旦打ち切りとなっており、2019年度以降は、再継続するものの、制度の縮小が図られることが議論されているようです。

相続税の対策を進めたい方で、将来学費が必要となるお子様、お孫様やひ孫様がおられ、現預金の余力がある方について、この直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置は非常に効果的な制度です。駆け込みでの利用もぜひ検討されるべきかと思います。

 

 

相続時精算課税選択時の必要書類と注意点

相続時精算課税の制度とは、この制度を選択すると、それ以降に行う贈与に対する税金について、一般的な暦年課税による贈与税の計算に代えて、この制度の贈与者である父母又は祖父母が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算することで最終的に税額の精算を行う制度です。

この制度は、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択ができます。

相続にあたってのタックスプランニングの観点からは、この制度を活用すべき場面はきわめて限定的なため、弊所ではこれまで相続時精算課税の制度を利用する提案を行う事例がなかったのですが、今回、将来相続税が発生しないことがほぼ確実な方より、お子様にまとめて財産を贈与したいという相談を受け、初めて相続時精算課税の制度を利用する提案を行いました。

相続時精算課税の制度の選択を行う一般的なケースの場合、その選択届出書に以下の3つの書類を添付する必要があります。

(1) 受贈者の戸籍の謄本又は抄本その他の書類で、次の内容を証する書類

  •  受贈者の氏名、生年月日
  •  受贈者が贈与者の推定相続人である子又は孫であること

(2) 受贈者の戸籍の附票の写しその他の書類で、受贈者が20歳に達した時以後(または平成15年1月1日以後)の住所又は居所を証する書類

(3) 贈与者の住民票の写しその他の書類(贈与者の戸籍の附票の写しなど)で、次の内容を証する書類

  •  贈与者の氏名、生年月日
  •  贈与者が60歳に達した時以後(または平成15年1月1日以後)の住所又は居所

ここで注意しないといけないのが、平成15年1月1日以降から現在までの住所又は居所について証する書類が必要になるという点です。住所および本籍地の変更がある方の場合、戸籍の附票の写しを過去の戸籍分まで遡って取得するなどの対応が必要になる場合があります。

その場合、戸籍の附票の写しを過去本籍のあった市町村からそれぞれ取り寄せる必要があります。

多少の手間で対応できる話ではありますが、現在の戸籍の附票の写しや住民票だけで必要書類が足りないケースがある点、要注意なポイントではあります。

福岡都市圏の住宅地と平成30年度の路線価の上昇

福岡都市圏の平成30年度の路線価の上昇率。
前回は、福岡市の都心部について取り上げましたが、続編として福岡市南区で平成29年度の記事と同一地点を対象とし、福岡市近郊~郊外の住宅地について取り上げてみます。

 


1箇所目は油山のふもとにある福岡市南区柏原の、とあるところ。

こちらの路線価は、

 

平成29年度から1年間の路線価上昇率:5.6万円→5.7万円(1.7%の上昇)

 


こちらの場所については、昨年度と同様、路線価の最小刻みの1千円だけ評価額が上がっておりました。

上昇率も、昨年度とあまり変わりません。

 

 

2箇所目は大橋から少し南に下ったところにある曰佐の、とあるところ。

こちらの路線価は、

 

平成29年度から1年間の路線価上昇率:8.6万円→9.7万円(12.8%の上昇)

 

昨年度の上昇率3.6%から打って変わり、1割強の上昇率となりました。この12.8%という上昇率は、前回の記事で取り上げた天神パルコ前をも上回る上昇率です。

 

 

3箇所目は中央区に近くよりまちなかである高宮の、とあるところ。

こちらの路線価は、

 

平成29年度から1年間の路線価上昇率:16.0万円→18.0万円(12.5%の上昇)

 

昨年度は6.7%の上昇でしたが、こちらも今年度は1割を超える上昇率となっています。

昨年度は、都心部と比較して穏やかな路線価の上昇率となっていましたが、今年は都心に近いエリアの路線価が急激に上昇し、都心部の路線価の上昇率を上回るという意外な結果になりました。 

福岡市近郊の住宅地にご自宅をお持ちの方で、これまでの地価であれば相続税が発生しなかった方でも、昨今の地価の上昇とそれに伴う路線価の上昇により、相続税が発生するなどということも考えておく必要があるかもしれません。

今年も続く福岡都心部の路線価の急激な上昇

平成30年7月1日に、平成30年分の路線価が国税庁より公表されました。

福岡都市圏の地価は、ここ数年の激しい上昇がまだまだ継続しており、一昔前の感覚ではついて行けない水準での取引が続いております。

昨年度、平成29年度の福岡都心部の路線価が、昨年の平成28年度の路線価と比較してどの程度変動したのかについて記事を書かせて頂きましたが、

同地点の平成30年度の路線価が平成29年度と比較してどのように変化したか、調べてみました。

最初に、弊所のある場所の路線価です。弊所は福岡市中央区高砂、地下鉄渡辺通駅と西鉄及び地下鉄の薬院駅の近辺に位置しております。商業地と住宅地が混合しているエリアですが、都心回帰の流れを受け、人口増加率の高い福岡市の中でもマンション開発が非常に盛んなエリアです。

 

 

弊所のある場所の路線価ですが、

 

平成29年度から1年間の路線価上昇率:23.5万円→25.5万円(8.5%の上昇)

 

昨年度に引き続き、今年も1年間で1割近い上昇です。

 

 

 

次に、福岡市最大の繁華街天神で、渡辺通りのパルコ横の路線価の上昇率です。

結果、

 

平成29年度から1年間の路線価上昇率:630.0万円→700.0万円(11.1%の上昇)

 

こちらは、1年間で11.1%と、昨年度に引き続き対前年比で1割を超える激しい上昇率となっています。

 

 

最後に、九州新幹線の開通と前後した駅前再開発や、地下鉄七隈線の延伸で近年勢いがある博多駅近辺について、大博通りの日航ホテル横の路線価です。

結果ですが、

 

平成28年度から1年間の路線価上昇率:316.0万円→373.0万円(18.0%の上昇)

 

こちらは1年間で18.0%と、昨年度に引き続き、対前年比ほぼ2割の上昇率となっておりました。

 

3カ所とも、昨年度よりわずかに上昇率が減少していますが、昨年度と同水準での路線価の上昇率となっている結果、

2年前の平成28年度と比較しますと、それぞれ18.6%、25.0%、40.1%ときわめて急激な上昇となっています。

 

相続税は相続財産の評価額に応じた累進課税となっているため、相続税額への影響率は、路線価の上昇率以上となります。

 

ここまで路線価が急激に上昇すると、2年前の地価を前提にした相続対策でさえ、もはや使い物にならない可能性も考えておく必要があります。

 

たとえ2年前、3年前に一度相続税の試算をされた方も、改めて相続税額の試算を行い直し、相続のプランを再度検討する必要がある可能性も、想定しておくべきです。

 

駆け込み賃貸物件購入による相続税対策と平成30年税制改正

平成30年度の税制改正で、小規模宅地の特例のうち貸付事業用宅地等について、相続の開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等については、相続人の方が相続の開始のタイミングまで3年を超えて引き続き事業と呼べる規模で不動産賃貸業を営んでいた場合を除き、小規模宅地の特例の適用対象外となりました。

 

小規模宅地の特例とは、相続税申告の際の相続財産の評価額の計算において、一定の要件を満たす土地につき一定の面積の土地まで定められた率での評価減を行えるというものです。貸付事業用宅地の場合、50%の評価減をこの制度で受けることが出来ます。

 

これにより、もともと不動産賃貸業を営んでいた場合を除き、相続発生前に駆け込みで賃貸物件を取得し小規模宅地の特例を受けることが不可能になりました。

 

もっとも、小規模宅地の特例が使えなかったとしても、相続税の観点からは不動産の賃貸物件を保有することは節税につながることが多く、今回の改正で不動産の賃貸物件取得が相続税対策上無意味になったというわけではないです。

 

ただ、小規模宅地の特例が使えなくなることにより、同制度が使える場合と比べ節税効果は低くなります。当然不動産市況の変化や物件の管理のしやすさ等、税務以外の要因も含めた総合的な判断が必要となりますが、小規模宅地の特例を賃貸物件で受けられたい場合は、早めの相続対策がより大切となります。

福岡都市圏の路線価の急激な上昇と相続対策(住宅地編)

福岡都市圏の平成29年度の路線価の上昇率。
前回は、福岡市の都心部について年率1割から2割程度の激しい上昇率となっていることを取り上げましたが、続編として福岡市南区を対象とし、福岡市近郊~郊外の住宅地について取り上げてみます。

 


1箇所目は油山のふもとにある福岡市南区柏原の、とあるところ。

こちらの路線価は、

 

平成28年度から1年間の路線価上昇率:5.5万円→5.6万円(1.8%の上昇)

 


路線価は1千円単位で発表されているのですが、ちょうどその最小刻みの1千円だけ評価額が上がっておりました。

上昇はしているものの、前回取り上げた都心部と比べると、上昇率は1%台と非常にゆるやかなものとなっています。

 

 

2箇所目は大橋から少し南に下ったところにある曰佐の、とあるところ。

こちらの路線価は、

 

平成28年度から1年間の路線価上昇率:8.3万円→8.6万円(3.6%の上昇)

 

先ほどの柏原よりは高い上昇率、とはいえやはり福岡都心部より上昇率は穏やかです。

 

 

3箇所目は中央区に近くよりまちなかである高宮の、とあるところ。

こちらの路線価は、

 

平成28年度から1年間の路線価上昇率:15.0万円→16.0万円(6.7%の上昇)

 

年率5%以上の上昇と、さきほどの2箇所と比べても高い上昇率となっています。

やはり、都心部と比べると地価の動向と同様、路線価の上昇率も穏やかであるという結果となっています。

とはいえ、高宮のように路線価の年間の上昇率が5%を超えているような場所もあります。

 

住宅地であったとしても、特に都心に近い場所については路線価の上昇率がかなりの率となっていることも十分にあり得ます。

しかも、この上昇率はあくまで平成28年度から平成29年度の1年間での上昇率です。それ以前から路線価が上昇傾向にあった場合、数年前からの路線価の乖離は当然もっと開くこととなります。数年前に相続税のシミュレーションを行っている場合でも、状況の変化に対応するためシミュレーションのアップデートを行う事は、やはり大切かと考えます。

福岡都市圏の路線価の急激な上昇と相続対策(都心部編)

平成29年7月3日に、平成29年分の路線価が国税庁より公表されました。

 

福岡都市圏の地価は、ここ数年激しく上昇しており、高値での取引が続いておりますが、平成29年度の今年の路線価が、昨年の平成28年度の路線価と比較してどの程度変動したのか、軽く調べてみました。

 

最初に、弊所のある場所の路線価です。弊所は福岡市中央区高砂、地下鉄渡辺通駅と西鉄及び地下鉄の薬院駅の近辺に位置しております。商業地と住宅地が混合しているエリアですが、都心回帰の流れを受け、人口増加率の高い福岡市の中でもマンション開発が非常に盛んなエリアです。

 

 

弊所のある場所の路線価ですが、

 

平成28年度から1年間の路線価上昇率:21.5万円→23.5万円(9.3%の上昇)

 

なんと、1年間で1割近い上昇です。

 

 

 

次に、福岡市最大の繁華街天神で、渡辺通りのパルコ横の路線価の上昇率を調べてみました。

結果、

 

平成28年度から1年間の路線価上昇率:560.0万円→630.0万円(12.5%の上昇)

 

こちらは、1年間で12.5%と、1割を超える激しい上昇率となっています。

 

 

最後に、九州新幹線の開通と前後した駅前再開発や、地下鉄七隈線の延伸で近年勢いがある博多駅近辺について、大博通りの日航ホテル横をサンプルに路線価の上昇率を調べてみました。

結果ですが、

 

平成28年度から1年間の路線価上昇率:266.0万円→316.0万円(18.7%の上昇)

 

なんと、こちらは1年間で18.7%と、ほぼ2割の上昇率となっておりました。

 

路線価は、土地の相続税評価の面積当たりの評価単価の基礎となるため、路線価の上昇は土地の相続税評価額にダイレクトに影響してきます。

 

さらに、相続税は相続財産の評価額に応じた累進課税となっているため、相続税額への影響率は、路線価の上昇率以上となります。

 

路線価の急激な上昇で怖いのが、数年前に相続税額のシミュレーションを行った結果そのままで相続対策を考えていると、実際の相続発生時に想定外の相続税額となりかねないことです。

 

ここ数年の地価動向、そして路線価の動向を鑑みるに、以前相続税額のシミュレーションを行われている場合でも最新の路線価等を元にシミュレーションのアップデートが必要であろうと考えられます。

 

 

フリーゾーンでの法人設立検討のためにドバイに行ってきました

1月の話になるのですが、フリーゾーンでの法人設立検討のためにドバイに行ってきました。

 

フリーゾーンとは、アラブ首長国連邦が設けている特区の制度で、フリーゾーンで法人を作ると、法人税の負担がなく、海外事業や国際投資を行うための中間拠点の会社等として使い勝手の良い会社となります。

 

フリーゾーンはアラブ首長国連邦内に数十箇所存在し、フリーゾーンによって行える業種が異なったりしますが、今回は、金融業のための法人設立の検討が目的であったため、DIFC(Dubai International Financial Centre、ドバイ国際金融センター)を訪問して来ました。

 

DIFCの外観

DIFCの外観

DIFC周辺の建物群

DIFC周辺の建物群

海外で税金がかからない会社というと、本当に全く税金が掛からないように思われるかもしれないですが、世の中そんなに甘くはないです。日本にいる限りは、どこの国を使おうと、基本的には日本で普通にかかるのと同程度の税金は発生するものと考えておく必要があります。

 

しかし、それでも法人税のかからない法人をドバイに作れると、租税条約が結ばれていないといった関係上、実質的に二重課税が発生するといった心配が避けられるケースもあり、今回の法人設立の検討へと至りました。

 

フリーゾーン内に法人を設立すると、確かに利益に連動して発生する法人税は無税となるのですが、日本の均等割に当たる、毎年必ず発生する税金が、以下全て為替レートにもよりますが年間140万円程度。その他、フリーゾーン内にオフィスを持つための家賃が最低クラスでも年間500万円程度。さらに、現地の会計事務所等への管理委託料等まで考えて行くと、下手すると年間1千万円コースの維持費が必要となってきます(他のフリーゾーンを使う場合は維持費はもっと安くて済みますが)。

 

これに見合う節税効果が出るには、相当の投資額や事業規模が必要となります。

 

海外を使って節税を夢見るのも、そう簡単ではないというお話でした。